チューハイを選ぶ若者。「ビールにしとけよ」怒るオジサン
30年間で「嗜好品」はこんなに変わった〈前編〉
■分煙化の流れ、電子タバコ「IQOS(アイコス)」の登場
現在タバコを嗜む人の数は1500万人ほどで、ここ30年の喫煙率は下がる一方だが、この間タバコに関する状況は大きく変わった。最大のトピックが電子式タバコの普及だ。近年急速に街で見かけるようになった加熱式タバコユーザー。火を着けたのがフィリップ モリスの「IQOS(アイコス)」だ。2014年に地域限定ながら日本で発売されると、オークションサイトでプレミア価格がつくほど人気を博した。本体の販売台数はすでに300万台を超える大ヒットになっている。
IQOSは燃焼を伴わない加熱式タバコ。ヒートスティック(IQOS専用タバコ)にセットされたタバコ葉を電子デバイスで加熱することで熱分解し、ニコチン、グリセリンを含んだ蒸気を発生させ吸引する。フィリップ モリスによれば、紙巻タバコに比べて有害成分の発生を約90%カットしているという。IQOSの後を追うのがブリティッシュ・アメリカン・タバコの「glo(グロー)」、日本タバコ産業(JT)の「プルーム・テック」。IQOSと仕組みは異なるが、加熱することで、タバコ成分を含んだ蒸気を発生させる点は同じだ。
この加熱式タバコブームの根底には、近年の健康問題の高まりがある。喫煙者自身の健康志向もあるが、とくにタバコによる受動喫煙による健康被害が問題視されたことが大きい。まずはオフィス、飲食店で分煙が徹底され、公園をはじめとする公共施設から喫煙所が撤廃され始めた。
紙タバコに比べ、有害成分の発生が抑えられ、ニオイも少ない加熱式タバコは周りに迷惑を掛けにくいことから、愛煙家も加熱式タバコに乗り換える人が相次いだ。現在、受動喫煙対策を強化するための健康増進法の改正が進んでいる。厚生労働省による案では、加熱式タバコも規制されるが、紙巻きタバコよりも規制が緩く、加熱式タバコが優遇される喫煙施設が増えれば、今後も爆発的に普及する可能性がある。